第一章./私とあの人とあの男。

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 当初、この人たちと関わり合うつもりは、全く微塵(みじん)も、これっぽっちも  想定していなかったのだが、…。  その頃すこし、肌が弱っていた私を、モノ珍しく思ったのだろう、  シルバーブルーの髪の彼が、  なぜか。  ある時から私の意志関係なく、私専門の皮膚科主治医になる運び。となってしまったのである。  いったい何がきっかけか、  それとも、合縁奇縁(あいえんきえん)と言われる類いのモノか。  人生とは、私が思うよりも珍事(ちんじ)に溢れた  世界なのかもしれない。  ・・・・・いや。  正直なところ、彼らと会ったばかりの記憶がうろ覚えで、  どうやって話したかも、出逢ったのかも  実は定かでないと言うのが、実際のオチなのだけれども。  そんな事を口走った暁には、  (特に)髪散らかし男のほうから悪態の弾丸を、躊躇なく  浴びせられることだろうから。  それは  さすがに避けたい。  ────…と、  そこまで頭で独白していたところで。  そう言えばお互いに、名前を知らず、これまで会っていたのではないか?という事態に、  ハタ、と気付く。  何だっけ、私この人たちに名前名乗ったっけ?  この人たちは多分、自己紹介(自己主張の間違いである)をしてくれた、  気はする。  多分、  それは覚えている。  ただ、前言にも述べたとおり、当時はほんとうに  もう関わり合うつもりなく、  その時はその場を(かわ)すための挨拶として強制終了した、程度で。  ゆえに彼らの情報など一切、頭に、インプットされていないのだ。  ・・・・・だから、  「アレ………………………。名前、何でしたっけ」  「…」  「は?」  こうなる  当然、こうなる。  ひとりで脳内会話を繰り広げていたために、なんの脈略もなく  勝手に話しが進んで、…こうなるんだ。  「…いや、ごめんなさい。突拍子もなく」  「…そうだな、突拍子もなさ過ぎてかるく驚いた」  「……あの、えっと。すみませんできればツッコまないでもらえるとありがたいです」  「別の穴にはおれがツッコんでやるけどな」  「そう言えば、名前知らなかったな。って、」  「今なら(しも)のチャック緩ぃから手加減して抱いてやんぞ」  さっきから話の腰を折るような発言には、あまりに()()けで  顔を引き攣らせながら、歩く生殖器か。  なんて内心では毒を吐きつつ。  「謹んでお断りします。他の色女とでもランデブーに出かけちゃって下さい」とわざと、  話しを逸らせば。  男は分かりきったような口調で「誰が「歩く生殖器」だバカヤロウ」と切り返して来た。
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