第一章./私とあの人とあの男。

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 ────…そして例のごとく、そんな私たちの仲裁にはいるのが、  「…もう良い。離してやれ」  「────チッ」  低くて、どこか有無を言わせない、カーフェイさんの制止の声に、  渾身の舌打ちを響かせたシルバーブルーの男が、くゆった自身の髪をガシガシ、引っ掻きながら  いわれた通り離れていくと、  「…甘ぇんだよお前も、コイツに。寝てるときどうせ引っ掻いちまうんだからわざわざ、おれがあの手この手で(じか)に、塗りたくってやるって言ってんのに」  ・・・・・いや、  「…「あの手この手って」、」  「知りてぇか?」  「いや結構」  「即答すんなや」  一矢(いっし)報いるような私の切り返しにはさすがの彼も、  ピキリっ。と額に、青筋を立てた様子だったが。  すんでのところで思いとどまったのか、眼前で殊更(ことさら)盛大に、ため息を放ってドカリ、と。  (わざわざ)私の隣りに場所移動し、腰を下ろしたシルバーブルー頭の男(────もう、そう呼ぶことにする)は、  背面のシートに背中を預け、長い脚を(絶対、わざとだ)こちらに、  寄せつけるようにして組んで、煙草を吹かしだすもんだから、  私も嫌がらせで、「…煙草ヤメテ臭い。喘息(ぜんそく)」と嫌味をブッ刺すことだけは忘れない。  「うるせ。ぺたんこが。おれに指図すんな」なんて、いつものごとく  小言は吐くものの。  本当に、私に害成すことは彼は絶対、しないと分かっているので、大人しく  持参したお昼ご飯を開封することにした。  ・・・・・現に、隣の男は直ぐに、口に挟んでいた煙草を  吸い殻に仕舞ってくれたし、  (…と言うか。直ぐ、鎮火するんなら買うだけもったいない、と思わない事もない。けど、ヘビースモーカーらしいし)  ・・・・ちょっとだけ、  申し訳なく思わない事もない、ほんのちょっと。  そう、ほんの一握りぐらいは、  申し訳なく、・・・・  「チッ。ほんっっっと女の風上にも置けねぇ、なンだよその乳は。萎えんだろーが男のブツが。もっと豊胸しようとか思わねェのか」  「…」  「ってかお前。いい加減、ブラジャー買えよブラジャー。25にもなって、スポーツブラとか胸がかわいそうだろ。だから貧乳なんじゃねーか」  「っ失礼な、………。ぶ、ブラジャーはに、苦手。なの窮屈で」  「ハァあ?お前、……マジで女か?性別詐称してんじゃねぇだろーな?胸のカタチ崩れるとか、フィットしねェとか色々あんだろ問題が」  「……別に、無い。貧乳で困ったことないし」  「オイ。いまの発言、世の中の男女引っくるめて敵に回してんぞ。ブラしてないとか、女の沽券(こけん)にかかわるから今すぐ、前言撤回しやがれ」  「……常々おもうけど、そもそもなんで男のあなたが「女の沽券」を語るんですか」
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