第一章./私とあの人とあの男。

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 もしゃもしゃ、フルーツサンドウィッチを頬張りながら、ありったけの  反発をする私に、対抗するように横からぶつくさ言うから。  静かに、お昼も堪能できないのが、なんだか哀切(あいせつ)きわまる話だけれど、  でも、肩身が狭い。とは、  一度だって不思議なことに、感じたことは無い。  カーフェイさんは基本的に、(と言うか、髪散らかし男のほうが、主に、口の締まりが緩いのだが)あまり、口を開かない人らしく。  彼の代わり。と言ってはなんだが、ごちゃごちゃと五月蝿(うるさ)いのが  シルバーブルー頭の、ヤツに限るが。  しかし、両者どちらにしたってきっと、お仕事柄、  私以上に忙しいとは思うのに、このお昼の時間を欠かしたことは、  今の一度だってないワケで。  ・・・・・なんで、そうまでして私と、時間を割いて、  過ごしてくれる、のか。  好意を寄せてくれて、る・・・?なんて、(おご)った思考は、さすがに厚かましい、し持たないようにしてるし、  まず有り得ない。  ・・・・と、思う、さすがに無い。  この人たちだったら、わざわざ自分から行かなくったって、立っているだけで芸術品のようである。  誰彼構わず、ひとを引き寄せるし、寄り付かなくさせることだって、可能。  こんな、芸術の神さまが精魂込めて造り上げたような、しなやかな美しさ、その上には人外の美貌がある。  美しさだけじゃない、  リムジンを遣わせているぐらいの、地位の高さだと推定すると、  どれだけのお偉いさん。なのだろう。  「────知りたい、」と思う反面、コワイという対極の感情も浮上する。  もっと自分に柔軟性があって、磊落(らいらく)だったら?  この際、奮って自らを省みて、中身を総取っ替えする事ができたら、  ────…でも。  知ったら最後・・・・、  取り返しのつかない「ナニカ」で大きく、(つまず)きそうで・・・・・・、  そう予測を立てだしたら、キリがないと解っていても、  齷齪(あくせく)と頭がフル稼働する。  ────…だから今日も私は、  知らぬ存ぜぬで自らを誤魔化し、  蓋をする  境界線の、一線を、  超えてしまわないように  臆病者  だけれど私は、  臆病であるからイマの自分の弱さに、  ひたむきに  取り組むことができるのだと  そう、  逃げることにして────…
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