第一章./モノローグ

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 横に長く、黒くて艶のあるリムジンの運転席から降りてきたのは  ────やけに強面の、黒味のサングラスをかけた丸坊主の男性。  その、ハイグレードな黒スーツ姿の恰幅だけでは、危うく  警察沙汰にでも発展していそうな、そんな様相ではある。  しかし、真反対の助手席から降車した男も類同した身なりであったため、  皆目(かいもく)見当違いだろう。と招かれざる出席客たちは、(たちま)ち小首を傾げるほかない。  ・・・・・彼らは恐らく、  このリムジンの乗車主である者たち専用の、ドアマン。  SPさながらの挙措(きょそ)、なめらかな身ごなし。  厳重な目配りと、沈着冷静な判断力。  それほどまでに脚光を浴びる偉人を、  招待しているのだという実情に、再び、来場者たちも  息を吹きかえしたように、熱を取り戻しはじめた。  運転席から降車した丸坊主の男性が、サングラス越しにひと通り、  視線を配って周囲の確認を終えると。  助手席から降りたほうの男へと目配せで首肯する。  そして首肯を受けたその男は、  どこか、(うやうや)しく上体を半分ほど屈め、  後部座席のスモーク硝子(ガラス)を二度ほど、ノックするとそれを合図に、  後部席を開扉(かいひ)した。  ────カツン、と。  男ものの踵が降り立つ音が、また彼らの喧騒を徹頭徹尾(てっとうてつび)、黙らせる。  それはまるで  勝手な熱を吹く弊風(へいふう)を、掃蕩(そうとう)させるかのごとく。  ────降車したのは、ふたりの男であった。  それも、慇懃(いんぎん)に腰を折っている黒スーツの彼らよりは、いくらか  歳若いと言えるだろう長身の、美丈夫の男が、  ふたり。  双方とも。  その美貌は、人々が目にしてきた『美しいもの』とは  桁違いの類いのものであった。
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