第一章./体調不良

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────────── ─────  ─────…腕のなかの少女が。  (たちま)ち、やすらかに寝息をスゥースゥー、立てはじめると先刻まで流れていた緩慢な空気の流れが、  ────…一瞬にして。  ピリピリとした異様なものへと逸した。  それは、後部座席を隔てた先のフロントシートに座る黒服たちへの、  物言わぬ重圧と、牽制となって彼らに襲いかかっていく。  「────オイ」  「……ッハッ。申し、訳…ございません。アーウェイ様」  「以後、…ッ以後このような事態が無いよう、迅速に、」  「────テメェら何か勘違いしてねェか」  フロントシートと後部座席を隔てるために用意されたカーテンですらも。  もはや、この麗人たる男のまえではまるで用途を為さない。  主君たる姿はバックミラー越しでも確認はとれない、────そうであるのに、"視えない"後部座席からは獰猛(ねいもう)な猛獣の殺気と、圧が。  出される司令の声質だけでうかがい知ることができる。  その含みにあるものは、"怒気"。  決して言い訳も、逆らってもならない。  これほどまでに、肌を粟立たせる事態を、自分たちは起こしてしまったのだろうかと。  彼らは思いもしなかっただろう。  「今日"が"おれでよかったな。テメェらは運がいい」  「…ッッ」  「っも、うしわけ、」  「アイツがもし"迎え"だったら、……テメェら今日で命はなかったぞ。強運だったじゃねぇーか」  アーウェイの声音はどんどん色を失い、温度が氷点下へと下がっていく。  厳つく、屈強そうな体格と、黒服に身を包んだ男ふたりは、一方はわずかに、震えながらハンドルを捌き。  助手席にすわるもう一方の男の顔色は、徐々に、青褪めていくばかりである。  「────アイツはおれより優しかねェ。一再のヘマを踏めば即、監獄楽園に逆戻りだ。今度こそ命の保障はねーかもなァ」  「っっ!申し訳っ、ございません、!」  「以後っ、気をっっ引き締めっ!」  「あぁそうだ。せいぜい気ぃつけてくれ。さんざん強姦や殺人罪でサツの世話になってきたテメェらが、(わら)にもすがる思いで処刑から逃れられたワケを一からよぉーく改めなおして、イマから職務に励めよ?  ウォングループがお情けで"わざわざ"引き取ってやったアイツの"温情"に免じてテメぇらは庇護してもらってる身分なんだ。  ────…次はねェぞ」  なァ?恩をかえすのが、  義理で、────…人情ってモンだろ?  重厚感のあるトーンで。  男たちに、そう低く、牽制を投げかけたアーウェイはふたたび、後部座席から精密な指示を彼らに繰り出した。  それは正しく、  ────籠の中の鳥を意図する
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