第一章./体調不良

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 自分のうでの中で、安らかな寝息をたて瞼を閉じているあどけなさの残った少女。  彼女を、柔らかく見つめ下ろすその純銀色の両眼(まなざし)は、とてつもなく甘さが滲みでている。  先刻、フロントシートにいる構成員に牽制した男だとは、到底、おもえないほどの柔和さだ。  クロロホルムが効きすぎたか。  そう、苦笑いをこぼしながら、分かりやすくシートを揺らし体勢をずらしてみるものの、  まるで起きる気配は微塵もない。  少しもぞりと動いただけで、あとは、すぅすぅと肩が吐息に沿って、上下に波打つだけである。  …相変わらず、色気のねーカオ。  困ったように眉尻を下げ、スルり、女の唇に指先で触れてみるが、これでも目を覚まさない。  よほど疲労していたのか、脳が疲弊してたのか。  車内にのこった刺激臭をのがすべく、スモークガラスの半分だけを開けたアーウェイは、  すこしだけ外の寒気に浸るように、その銀色の視線を外に寄越した。  それでも映り込む景色はなんら面白味もなく、自身の臓器ですらソレらでは拍動しないことを知っているので、  ふたたび、彼は視線を腕のなかの、眠る少女へと移行させた。
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