第一章./体調不良

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 ス────、と自身の顔をかるく屈め、覗き込んだ丸い面立ちの輪郭に、もう一度すり、と指先を滑らせていく。  女性らしく細いフェイスライン、  右頬にある黒子、  柔らかな肉付き。  寝入っているのをいいことに、触り放題の少女の下唇、上唇。  どれをとっても平凡に変わりはないが、時折みせる独特なオーラと、  純真無垢に自分たちを見つめてくるまっすぐな両眼。  ・・・・・単に世間知らずなだけか、  怖い物知らずというのか。  好奇心旺盛の気質を秘めてあるのに、非常に慎重深く、理知的。  だからこそこれまでにも、危機的回避は有能であったのだろう。  闇に染まりきらず、かと言って光りだけにも留まらず。  (……優等だな。世間知らずではあるが馬鹿じゃねぇ)  親の教育がいき届いてる証拠か。  失敬にもほどがあるが、そんな憶測で一計を案じたアーウェイはいちど、嘆息する。  そして腕のなかの少女が、まかり間違っても起き出さないよう、必要最小限の振動で体勢を変えることに徹した。  丁寧に、慎重に、  彼は自分の太腿を枕がわりに、伊万里の肢体を体重移動させ、  柔らかく寝かせてやると  傍らのシートに放り投げていた自身のコートを、その小さなからだにかぶせてやった。
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