第一章./体調不良

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 手持ち無沙汰になったアーウェイのごつごつとした指先は、  暇そうにくるくる、  足枕にいる彼女のみじかい髪の毛先を、意味もなく弄ばせて。  (あーー…。これ目ぇ覚ましたら絶対ぇ、ぎゃんぎゃんうるさく問いただして来るパターンじゃねーか)  伊万里は決して、  勘付くのが遅いタイプの鈍感女ではない。  ・・・・否、いまのは語弊があった。  少々の天然気質やら世間知らずな面、もとい鈍臭さは、まぁまぁ────・・・あるにはあるが。  普段は、自分たちといなければ、ごく平凡で、おっとりとした性格で。  どこにでもいる『フツー』の20代半ばの女性という、上っ面であることには特段、変わりは無い。  現に、────…彼女との初対面の折も、それを狙って(────偶発的ではあったが)已むなく接触した事実もぜんぶは否定できない節はある。  しかし、伊万里に関しては完全に相手を見誤った。  思いのほか聡く、柔軟な思考的人間の持ち主だったのである。  隙があるようで、どうにも付け入る隙が見当たらない。  一見、押しが弱いのか?というふうに観察してみたのだが割とそうでも無いらしい。  応か否かは案外、はっきりしているし、  直情的にアーウェイと口喧嘩をするわりには、冷静な面も兼ねそなえていることは  人と(なり)を見ていてもよく分かる。  ・・・・・恐らく、  芯がしっかりしているためであろう。  ────…それが  海屋(かいおく) 伊万里(いまり)という、  これまでに彼らが会ったことのない  一風変わった  人種だったのだ
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