第一章./レスト・タイム

16/27

13人が本棚に入れています
本棚に追加
/102ページ
 ぶつぶつ独りでに、喋ってしまうのは、速るこころを自分でも認めたくないから。なんだけれども、  それはともかくとして。  この状況下はさすがに、いただけないよなぁ…。とか自分なりに慰撫(いぶ)しつつ、  改めてアフタヌーンティースタンドに乗っかった艶々な高級洋菓子たちを、  じっくり、目に映し込んでいく。  (えぇ〜……、美味し。そう…)  上段には各々アレンジの効いたモンブランが5つに、お洒落なアンティーク調のミニ袋で仕切られたマカロン2つ、ブランド名のはいったチョコレートが3つ。  スタンド中段は、ごろっとしたマロンを直に、使用したタルトに、筒状に固めたチョコレートにぎっしり詰まったモンブランのピスタチオがけと、テリーヌ。  下段に、チーズクリームのボローバンが2つに、サラミのオープンサンドが一切れ、小さなナプキンが添えられたプレーンスコーンが4つほど。  ・・・・・と。  アフタヌーンティーセットの呼称が丁寧に記載された品目表が、いっしょに  添えられていたので黙読していた次第であるが、  どうしようにも、その彩りと芳醇に、ゴクッと喉が物欲しく鳴ってしまう。  朝からなにも食べていないのだ。  もっと言えば昨日の晩からなにも口にしていない。  そこまで黙考して、  「……あっ」  ふと、ある問題事態に気が付いた。  (…母さんに電話して、……なかったよね?)
/102ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加