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公園の東屋を見つけ、避難する。 木のベンチに腰掛け、傘を立て掛ける。 鞄も自分の隣に置き、足を伸ばしてしばし脱力。 思ってたより、疲れたみたいだ。 持ち歩いている水筒を出して、薄くてぬるいコーヒーを一口飲む。 もうそろそろ、復活してもいいはずなのにな。あたし。 パニック症からくる抑うつ、という、今のご時世あまり珍しいわけではない診断。 自分の身体や脳みそが思うようにいかなくて、いろいろ足掻いたものの結局仕事を離れた。離れざるを、得なかった。 仕事は好きだった。本来の、仕事は。 未練は、ある。 でも、あの状態のあの職場であれば、戻れないし、戻りたくない。向こうも迷惑だろうし。 回復しなきゃ、動き出さなきゃ、と思えば思うほど、体調も気持ちも崩れてぐちゃぐちゃになった。 まるで、雨も風も一緒くたに吹き荒れているかのようだった。 前の自分には戻れないし、これから出来ることを見つけてやっていくしかないんだ、という考え方を見つけてから、ずっと吹き荒れる風は少し収まった。たまに突風が吹くけど、それは仕方ない。誰だってそういうことはあるんだ。きっと。 でも、雨だけは止まない。 ずっと振り続けている。 今のあたしを具現化するかのように、雨音が強くなってきた。雨粒が大きい。 避難しておいて良かった。 水たまりに雨粒が跳ね返るのを見つめる。
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