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4.メオス、旅を始める
メオスは、ライヴの日の深夜に意識を戻した。父ヴァイザスが亡くなったことを知らずに………。
「………ったくあのオヤジめ、マジでやりやがったな………まだ痛ェし」
メオスはゆっくりと立ち上がった。
「それにしても、いつもガンガンに強ェオヤジのオーラが…………無ェ!!まさか………まさか………!!」
メオスは赴くまま、北にある大都会キャロスの方向へ向かって走り出した。
「まさかオヤジ、死んじまったなんてこと無ェよな!?」
メオスが息を切らせながら、急いで1時間ほどでキャロスに到着した。
またたく星と切れることの無いオフィス街の高層ビルの街灯が、一層メオスの姿を小さく映す。
すると、男2人にしつこくつきまとわれている美少女がいる。
「あれ………歌姫のバービナじゃねェか。あんなとこで何やってんだ?」
「あれぇ?歌姫のお姉ちゃんが1人でこんなとこ歩いてて良いのかな~?」
「お持ち帰りが良いのかな~?」
歌姫と言われる美少女のバービナは、狭い路地で男2人に付きまとわれている。
「ちょっと、止めなさいよ………私はジャーマネに見つかりたくないからここを通ってるだけ」
「そうだ、止めときな。誰かサンの息子がここを通りかかっちまうなんざ、オメエら不運だったな」
メオスは民家の屋根からスッと降り、指を鳴らす。
「何だコイツ、ただのガキじゃねぇか」
「やっちまおうぜ!」
男2人がメオスに向かって行くが、刹那のパンチで呆気なく倒れる。
メオスはバービナに詰め寄った。
「あのね、何で歌姫のねーちゃんがこんなとこにいんだよ!少しゃ気ィ付けろよ!」
「あ………ありがとう」
「オレ居なかったらどーなってたんだよ!」
バービナは黙り込んだ。そして、しばらくして感慨深く、ポツリポツリとメオスに言葉をかける。
「………あなた、確か誰かサンの息子って言ってたわね?……………もしかして………まさか………やっぱり似てるわ」
バービナは目を潤ませて、メオスは何時ぶりかに見る少女の涙に動揺している。
「まさか………オヤジの名前は………」
メオスとバービナは口を揃えた。
「ヴァイザス!!!」
メオスはまさか、とばかりに硬直する。
「えっ!?マジかよ!!?あのバケモンのオヤジが………!?」
「本当に何も知らない様ね。うちに着いたら教えてあげる。ついて来て」
メオスはバービナに促され、一緒に歩き始める。
カメララッシュが続く中、バービナが叫ぶ。
「ちょっと、誤解しないでよ!ただのボディーガードだってば!」
「オレがぁ?」
「ちょっとした建前よ」
「しゃあねェか………」
バービナは、カードで家を開けた。
そこにはトレーニングマシンがズラリとそろっている。
「あのね、人の部屋をジロジロ見ないでよ!」
「つーか、歌姫の私生活が………」
メオスが口をポカンと開けている間、バービナはツンツンしながらテーブルを叩いた。
「あのね、ここはね、お風呂とトイレ以外はジャーマネの監視カメラ付きなの!外ではカメラがうるさいし、中では監視!ガマン出来る?」
メオスは考え込む。
「家ん中は勘弁してもらいてェよな………」
「でしょ?」
苦笑するメオスと文句を言い続けるバービナの空間は、どことなく異様だった。
バービナはタブレットをバッグから出した。
「早速だけど………動画見る?」
「動画?」
「ヴァイザスの経緯を知りたいんでしょ?」
「あ………ああ」
嫌な予感がメオスをよぎる。
「ちょっと待っててね」
バービナはタブレットを用意する。
メオスは、恐る恐る動画を見始めた。
「これが………オヤジの正体………」
「え?」
「オメエには見えねェか。オヤジは魔界でも一握りしかいねェ超魔族なんだ」
「超魔族………」
バービナはゾクッとした。
「ここ見てみろよ」
バービナが画面をズームさせると、ムンクとジャドウを守る為に、大きな黒い翼がガードをしている。
「あ………薄い幕みたいのが見える………」
「だろ?フツーの魔族の翼の3~4倍はあるらしくて、オレが探ると毎回殺気立ってたぜ」
「本当に、すごく大きい翼ね。何であんなにヴァイザスだけがボロボロだったのか、やっとわかったわ………」
メオスとバービナは、目を凝らしてライヴの立ち回りをしばらく見ていた。
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