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1.プロローグ
この世界は、空高くにある天界、人間界(地上)、マグマの底にある魔界に分かれている。天界、魔界にはそれぞれ、ごくわずかしかいない聖天族、超魔族がいる。
人間界には、堕天使が人間をはびこっている。
人間界を管理するはずの天界も、堕天使を天界へ戻すことが精一杯で、天界の仕事としては劣っていた。
人間界でも近付きづらい、デビルマグマという地域に、とある父子が住んでいる。
子の名前はメオス。この物語の主人公である。
彼は、見た目は紫色の髪で紅い瞳、耳がとがって牙生えている魔族の少年で、父である超魔族のヴァイザスと共に暮らしている。
ヴァイザスは、天界と地上を奪う為に、「死の笛」として恐れられている「魔笛」を使い「ダークヒーロー」というバンドを組み、活動をしている。
メオスは父のヴァイザスによって、格闘技と横笛の手ほどきを受けている。
初めは父の言うことを素直に応じていたメオスも、修行が厳しくなると共に、魔笛を吹き続けるヴァイザスに反抗心を抱く様になった。
メオスは話を切り出して来た。
「オヤジ、格闘技は確かに使えるぜ?」
ヴァイザスは首をかしげる。
「………何だ?」
「魔笛は正直止めて欲しいんだ」
「何?」
「あれは危険過ぎる。魔笛の為に横笛を練習するんなら、オレは笛は止める!!」
「何だと?」
メオスの忠告に対して、ヴァイザスは眉にしわを寄せて睨みつけた。
「あれは危険過ぎる。魔笛の為に横笛を練習するんなら、オレは笛を止める!!」
「何だと?」
メオスとヴァイザスはお互いに拳を固める。
「実際そうじゃねェか!音ひとつで精神や魂が殺られてるんじゃねェかって、ネットで拡散されてるんだよ!だからオヤジ、もう止めてくれ!」
メオスは更に訴える。
ヴァイザスは高笑いをする。
「ハハハッ!………オメエ………いつの間にそんな生意気になって来たか………ハハハッ!」
「何がおかしいんだよ?」
「俺はそれが目的なんだぜ?もうこの世の中は、堕天使とザコ人間で沢山だ。まともな人間などほとんどいねぇ」
「だからって人間滅ぼして良いワケねェじゃんかよ!」
「言わせときゃホントに生意気になりやがってるな」
親子喧嘩が過熱する。
「ここは人間の住む場所なんだ!」
メオスは怒鳴りつけた。
ヴァイザスの笑いが止まり、急に態度が豹変した。
「うるせぇ!オメエは何にもわかってねぇ。堕ちてるのは人間どもだけじゃねぇ。堕天使もだ。そいつらも潰さないとな」
メオスは動じずに訴え返す。
「………そっちこそ知らねェのかよ?オヤジ、アンチに相当ディスられてるぞ。いつ誰に狙われてるか、わかんねェんだぞ?それに堕天使だって魔笛でザコ魔物を呼んで天族が取り憑かれてるんだぞ?マジで何も知らねェのかよ?」
ヴァイザスはメオスの忠告を聞いているのか、無視しているのか、出かける準備を始めた。
「もう時間だ。行って来る」
「マジで気ィ付けろよな!」
メオスの叫びが空しく響く中、ヴァイザスは漆黒の翼で翔びながら収録場所へ向かった。
「オヤジ、ホントにわかってんのか………?」
メオスはしばらくじっと空を眺めていた。そして、自分の笛を出して自作曲を吹き始めた。
(オヤジがいない時にこの笛を吹くと、落ち着くんだよなぁ…)
その笛は、魔笛と同じく、小さい骸骨の形をたくさん施してあった。
(音色はすげェ良いんだけどな………オヤジが極悪センスにしちまったからなぁ…)
メオスは時間をもてあましながら、無心に笛を吹き続けた。
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