カゲノコチャン

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 ここで、ようやく絵本の出番です。  わたしには幼い頃、とっても好きだった絵本があります。タイトルは『カゲノコチャン』。影の女の子が、いろんな人の影になって形を変えて遊んでは人を驚かすというお話です。影ですからカゲノコチャンには顔がありません。真っ黒です。  人を驚かせては大喜びするカゲノコチャンでしたが、ある時、影の国の王様からお叱りを受けて、影のできない日陰の国へととばされてしまうという結末で。これはたぶん、ふざけてばかりいて本来の役を果たさないとその役割すらなくしてしまうよという教えといいますか、そういった含みがあったのだろうと思います。  でも、わたしはそんなカゲノコチャンが大好きだったんです。  それなのに影の王様はひどいなあ、カゲノコチャン可哀想だなあって思ってました。カゲノコチャンは顔もないし名前もない。それも可哀想だなって。  勘のいいみなさんはここでもうお気付きだろうと思いますが……わたしはカゲノコチャンに名前をつけたんです。  ──アイチャンという名前を。
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