カゲノコチャン

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 プラケースの中には幼い頃のアルバムも入っていました。何気なくめくってみると、わたしと愛ちゃんの幼稚園時代の写真が貼ってあって……恐ろしいことに愛ちゃんには影がありませんでした。もう全身から血の気が引きましたよ。  つまり影のアイチャンは、あいという名前の子の影になったのではなく、本体を乗っ取っていた……ということなんでしょうね。だから、わたしとはなんの接点もないキラキラ女子の愛ちゃんは、急にわたしと仲良くなり……引っ越しすると知れば引っ越し先までついてきて、今度は藍色の藍ちゃんを入れ物とし……中学が別々になると知れば担任の中へと入り……その執念はストーカーさながらです。  必ず『あい』という名前の人物を見つけだしては身体を乗っ取り、わたしの友達になろうとする。きっと中学を卒業すれば、また高校で『あい』を探し、わたしの前に現れる……そう思ったら恐ろしくて仕方がありませんでした。  更に恐ろしいのは、中学が別々になった途端、藍ちゃんが知らん顔をするようになったとお話しましたよね? あれはたぶん、知らん顔をしたのではなく、本当に知らなかったのだと思います。影のアイチャンが抜けると、わたしとの記憶も消える……そういうことじゃないでしょうか。
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