カゲノコチャン

　どちらにしても、このままではわたしは一生アイチャンにつきまとわれる。しかも、そのたびに『あい』という名前の誰かが犠牲になる。犠牲といっても死ぬわけではないですけれど。

　だから、アイチャンを絵本に戻すべきだと思ったんです。方法は簡単です。名前をつけたからそうなったのであれば、また名前をカゲノコチャンに戻せばいいんじゃないかって。

　アイチャンと書きかえた箇所を黒マジックで塗りつぶし、その上に『カゲノコチャン』と書いてみました。そんな簡単にいくはずはないと思っていたのですが、全ページを修正すると、じわじわと絵本に墨がにじむように広がり、カゲノコチャンが戻ってきたんです。

　もう、ほっとするやら、恐ろしいやらで、わたしは絵本を閉じてビニールテープでぐるぐる巻きにしました。もう二度と絵本から出てこられないように──。