カゲノコチャン

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 でも、やっぱり事は簡単には済みませんでした。  その日の夜、わたしがうつらうつらと眠っていると……押し入れから音が聞こえてきたんです。  カタカタ……カタカタ……って。  気のせいだと思ってそのまま寝ようとしたんですが、だんだん音が大きくなっていって……ああ、きっとカゲノコチャンが暴れているんだなって思いました。絵本から出たいんだなって。  考えてみれば酷い話です。カゲノコチャンは影の王様には日陰の国にとばされ、わたしが名前を与えたことによって絵本から出られたのに、また絵本に閉じ込められてしまったんですから。  考えて考えて考えて、わたしはひとつの結論に至りました。もう一度、名前をつけようと。今度は絶対に誰にもとりつくことのできないように、絶対に『無い』名前にしよう。そうすれば、絵本からは出ることができる。でも、誰にもとりつくことはできない。
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