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みなさんは、どうしてお天気が変わるのか、知っていますか?
小学校の理科の時間に習いましたね。
太陽によってあたためられた海や川の水分が、蒸気となって空へと上がり、やがては雲となり、ついには雨を降らせます、とかなんとか。
ノンノンノン。
小ざかしい屁理屈を信じてはいけません。科学なんてうそっぱちです。カッコつけのでまかせです。
本当はね、神さまたちの仕業なのですよ。
空の高い高いところで、人々の恋を実らせるため、神さまたちが必死のパッチで働いて、晴れたり、曇ったり、雨が降ったり、風が吹いたり、雷が鳴ったりするのです。
天界での話題は、今日もダイスケとサナエの恋の行方についてでした。
いつまでたっても告白をしないダイスケに、イラつくのは風の神。
「ガツンと一発、決めたらんけえ」
鼻息も荒く吼えたてます。
「あらあ、そんなに怒らなくてもお」と、しなを作るのは太陽の神。
「いろいろあるのよ、若いって。素敵な年ごろなんだからあ」
煮えきらない男のとろい態度にも、影のない理解をしめすのでした。
「調べたところによりますと、あの男女が顔を会わせてから、かれこれ十二年の歳月が経っています」
雨の神の冷静なもの言いに「そいつは長えな。幼なじみにも、ほどがあるってもんだ」と陽気にはしゃぐのは、雷の神でした。
十二年といえば、この二人にとっては、物心ついてからの時間ほぼすべて。人生そのものといっても過言ではありません。
高校一年生にしてみれば、幼稚園時代から続く交友は、悪くすればくされ縁とも取れるのですが、そのじつ、ダイスケとサナエのおたがいが、相手を憎からずと思っているから話はややこしい。一番やきもきしているのは、告白を心待ちにしているサナエなのです。
幼いころからダイスケのことをよく知る彼女は、半ばあきらめの境地に達していました。
こいつがそんな根性のあることを、できるはずがない。
幼なじみのへにゃ男ぶりを、しかと見極めています。しかし、決して軽んじているわけではありません。
ちょっとなよっとしているだけで、やさしく、さらにはなかなかの男前ではないか。正式な申し込みこそないものの、いまも仲良くいっしょに学校から帰ることができているのだから、それで良しとしよう。ぜいたくを言ってはいけない。
などと、自分で自分に言い聞かせるのでした。
いっそのこと、あたしのほうからぶちかましてやろうか。
とも考えるのですが、もし断られなどしたら、ぎくしゃくとした気まずい空気が二人のあいだに入りこみ、せっかくの関係が壊れてしまう。やっぱりここは、そっとこのまま、ゆるやかに愛情を育んでいこう。
と、はやる心の手綱をぐっと引き締めるサナエなのでした。
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