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「しかし、ここまで仲がよいんじゃ。男らしく『好きじゃ』と言ってしまえばよいものを」
「だれもが、あなたのように、雄々しいわけではありませんよ」
風の神をたしなめながら、太陽の神が一歩前に出ました。次はわたしが、といった風情です。
「力まかせにひっつけようとしないで、自然とよりそいたくなるよう、手をほどこせばいいのですよ」
おお、リアル『北風と太陽』。
太陽の神が天へとまっすぐに腕を伸ばし、手に平をヒラヒラと舞わせながら大きく丸くおろしてゆきます。まるで巨大な火の玉を描くかのように。
指先がピタリと太ももにはりついたとたん、さんさんとした陽の光が、二人へと降り注ぎました。汗をかいた少年に、少女がハンカチーフをさし出すことをねらったのです。
「なんか、あっちーな」
手のひらで顔をあおぐサナエに、ダイスケは無言でうなずきます。
「さっきパンツ見たんだから、アイスおごってよ」
「えーっ」とささやかに抗議する男の手をとって、ずんずんとお店に入りこみ、出てきたときにはソーダバーをかじっていました。
「あれでは、カツアゲじゃの」
「手をつなぐところまでは、いけたのにい。惜しかったわ」
「チョコアイス、ひとくちちょうだい」
ダイスケの右手へと、サナエがくちびるを開き迫ります。白く整った歯がかわいらしい。
パキッとチョコのコーティングをかみわる乾いた音をたてて、ご満悦のサナエ。
ほほ笑みとともに「ん」とソーダバーをさし出します。てれながらも、ひとかじりするダイスケ。
そのあとは、ごくごく自然に言葉を交わす男女にくらべ、天界では「てえへんだ、てえへんだあ。間接キッスだあ」と雷の神が大騒ぎです。
「雷さま。小学生ではないのですから、そろそろ落ち着いてください。それにちょっとご相談が」
雨の神がうかれる神に額をよせました。なにやらひそひそと話しこんだでいたかと思うと、にやりとそろって笑みをうかべます。
「それでは、私たちが力をあわせて」
「おのことめのこを、めでたく結びつけて見せらあ」
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