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ようやく
長い長い雨がようやく上がった。
霧雨のような雨だったけれど、傘を差すには却って具合が悪い。
身体にまとわりついてくるような雨は防水の衣類でも着ないと防げない。
止むのかと思われるような雲が薄くなり、少し明るくなった時にもすぐにまた降り出した。
そんな雨が30年ぶりにようやく上がったのだ。
雨の最初に生まれた赤ん坊は30歳にして、初めてお日様を見ることになった。
人類は天気予報士がこぞって予報したこの長い雨の弊害を防ぐため、殆どの通路にドームをかけて、皮膚にあまり悪影響を与えない紫外線を含むライトを開発し、朝6時から夕方6時までは雨の下でも明るく暮らせるようにした。
おかげで、くる病などで骨に異常が起きることは防ぐことができた。
ようやく雨が上がったこの日は、紫外線ライトもスイッチが久しぶりに切られ、本当のお日様を享受しようと言う事で、皆、ドームの外に出た。
そして、太陽が顔を出した。
その瞬間に、これまでの太陽とはあまりに違う強さの日光に照らされ、人間は瞬時に溶けてしまった。あまりに久しぶりの自然の紫外線は大分刺激が強かったようだ。
実は30年間降り続いた雨で、空気中の塵などが取り除かれた上に、太陽が少しだけ地球に近づいていたのだった。
地球の上では、銀色の光る物体の中で何やら会議が開かれていた。
「やりましたな。これで人類滅亡計画は終わりになりまするめ。」
「そうですな。後何回か色々な地域で繰り返せば人類はいなくなりまするめな。」
するめの形をしたどこかの惑星の迷い人達が地球にずっと雨を降らせて、太陽の接近をも気づかないように調整していたようだ。
「何せわれわれの惑星は40年前に滅びてしまいましたのでするめから。」
「そう、そして、この自然豊かな惑星に目をつけて、乗っ取りの計画を立てたのでするめから。」
「降らせた雨で、水は更に豊富になったし、我々は、太陽が少し位近くても平気でするめからな。」
そんなふうな話をして、銀色の乗り物は次の地点の雨をやませるために地球の自転に合わせ、太陽のある場所の雨をやませに行くのだった。
【了】
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