雨上がりの昼下がり

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朝雨(あさめ)中学校= 3−A組 晴「あ!おはよー!」 時雨「あ、おはよ。」 俺は風葉 晴(かざは はれ)。 ふつーの、極々変わらない中学生。 俺は、ちょっとだけ羨ましがられることが有る。 それが、「晴れ男」ということだ。 俺がいると、必ず晴れるんだ。 でも、もちろん世の中には「雨女、雨男」もいる。 もちろん、そういう人たち操作できるわけじゃない。 でも、俺は操作することができる。 能力だ。 俺がいるからと言って、毎日晴れているわけでもない。 そんなことしてしまったら、ここら一帯砂漠化しちまう。 だから、「ある女」にお願いする。 晴「時雨、雨降らしてくんね?」 時雨「あ、いいよ。」 すると、一瞬で雨が振り始め、クラスの皆はどよめいた。 こいつも「能力持ち」だ。 雨野 時雨(あまの しぐれ)。同級生の女子だ。 こいつは俺とは反対に、「雨を操る」。 つまり「雨女」に値する。 俺と時雨が出会ったのは、中学1年の昼休みだった。 =1−C組= 晴「ん〜、どうしよ〜〜〜!」 時雨「どうしたの?」 この頃から、俺等は仲が良かった。 でも、お互い「能力」を持ってることは一言も話さなかった。 でも、俺は困っていた。 俺の力が強すぎる!!! 厨二病とかそういうのじゃなく、真面目に! 実はこの時、雨が約1ヶ月降らなかった時があった。 俺の「能力」は、感情に左右されやすい。 その時は、確かテストがもりだくさんの時期で、気持ちが高ぶっていた。 多分それが原因だった。 どうすれば良いのか困っていた。 晴「最近雨降らねぇから、家で好きなだけ水が飲めねぇんだよ〜!」(誤魔化し) 時雨「そうなの?ん〜、」    「それ、あたしが解決してあげられるかも!」 晴「え?」 時雨「ちょっとついてきて!」 いきなり席から立ち上がり、時雨は屋上へと続いている階段を駆け上がる。 俺も負けじと、追いかけた。 屋上について扉を開くと、太陽の光で焼かれそうなほどの暑さだった。 太陽が、これでもか!とばかりに照りつけてくる。 時雨「晴はさ?」 晴「ん?」 時雨「雨、好き?」 突然の質問に、少し黙り込む。 その間にも、汗が滴り落ちる。 俺に背を向けて、南を向いて後ろに腕を組んでる時雨は、何を考えてるのだか。 晴「ま、天のお恵みというだけあって、俺等にとっちゃ大切なもんだし、まぁまぁかな」 時雨「そっかぁ〜。それじゃあさ、いつ降るのが一番いいと思う?」 晴「降るタイミング?」 なんだそれ。 それが何と関係してくるんだ? 晴「ん〜、夜じゃね?そしたら結構涼しいし。」 時雨「うんうん、そうだよね〜。」 晴「じゃあ、時雨はいつが好きなんだよ。」 そう聞くと、時雨は俺の方に首を傾け、言った。 時雨「昼、かな。」 晴「昼?」 時雨「それも、小雨が一番いい。」 晴「なんでなんだ…?」 本当に気になった。 なんで昼、小雨、このセットなんだ?と。 時雨「それはね…?」                            「見れば分かるよ」 そう、時雨が居たときだった。 雲行きが怪しくなり、薄い雨雲が空をよぎる。 そして____ 小雨が降り出した。 少し冷たい。 でも、太陽の光で少しあったかい雨だ。 時雨はスマホを開いていた。 そして、とても静かな、雨に合うって言うのもおかしいけど、そんな曲を流した。 晴「タイミング凄いな。お前が降らせたみたい(笑)」 時雨「ん?そうだけど?」 ・・・。 は? 時雨は「なんでそんなこと言うの?」って顔をしているけど、「なんでそんな当たり前みたいに言うんだ?」と俺は思う。 普通なら「そうだね〜。」的な反応だろ? どういうことだよ… 時雨「晴、風邪引きそうなら教室戻っててもいいよ。」 晴「最近暑すぎたから、ちょうどいい。」 雨に2人でうたれる。 髪の毛が少し湿ってきた。 時雨は全く動かず、ただただ学校の向こう側の街を眺めている。 俺は、隣に行ってみることにした。 時雨の隣は、不思議と居心地が良かった。 一緒に街を眺める。 時雨「晴。」 晴「?」 時雨「たくさん晴らしてくれてありがとう。」 時雨は視線を動かさず、まっすぐに言った。 晴「え?」 時雨「晴、ずっと晴らしてくれてたでしょ?」 晴「フッなんだ、バレてたのか。」 時雨「あたしだって同じようなもんだからね。」 2人でクスクスと笑い合う。 時雨「最初に聞いた、「いつ降るのが好き?」って聞いたのはね?私は「今」が一番幸せだから。」 晴「今?」 時雨「あたしは、これを見たかったの。」 晴「これ?」 時雨「「あるもの」を。」 晴「・・・。」 時雨「今日は見られるかな…」 見られる? 何のことだ…? 時雨「晴、今から雨を晴らすけど、まっすぐ街を見てて。良いもの見せてあげる!」 晴「え、え?」 急に雨雲が通り過ぎ、また太陽が照らし出す。 晴「っっっっっ!!!!!!!!」 その時__。 俺の目の前には、その「あるもの」が写り込んだ。 時雨「きれいでしょ?だから私は昼に降る小雨が好きなの。」 空には、信じられないほどクッキリと、きれいな虹が街にかかっていた。 晴「初めてみた、こんなきれいなの…」 時雨「でしょ?また、晴が晴を続かせてくれたら、作ってあげるから。」 そして今に至る。 あれからも、時雨は俺にあの虹を見せてくれた。 そして、卒業式___。 晴「もう卒業式か〜。」 時雨「だね〜。」 晴「最後の卒業式はどうする?」 時雨「雨を降らせて虹の門をみんなでくぐれれば、最高だね〜」 晴「んじゃ、めっちゃ晴らすからな!」 その日は、今年1番の最高気温を記録した。 そして、式が終わり… 時雨「行くよ!」 晴「やれ!」 小雨が降り出す。 会場からは、「あぁ〜、、、」と絶望の声が上がる。 これから、皆は凄いものを見ることになるだろう。 。 時雨「よし、それじゃ晴らすよ!」 晴「おし!」 空が晴れると、とても美しい虹がかかっていた。 皆がそれに夢中になっている。 時雨「ヘヘッ成功したね!」 晴「だな。」 2人で遠くから虹に夢中になっている皆を見る。 すると、虹を見入っていた男子たちが、こちらをみてニヤニヤしている。 時雨「え、なんだろ…」 晴「👍!」 時雨「え___」 急に黙って晴に腕を引っ張られる。 その勢いのまま、私達は虹の下に立った。 女子たちまでニヤニヤしている。 晴「んじゃ、フィナーレだ。」 時雨「え__。」 晴「。」 それは、とても嬉しい言葉だった。 時雨「うん。もちろん!」 一斉に拍手が起こる。 その日、世界中に虹がかかったという___。                          END.
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