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ヨニイ 弐
「ロマンチックなもんじゃのォ」
生きて月日を経て、様々な智慧をさずかったら、闇が黒じゃなくなって、ヨニイは紺青の空を見あげていた。
夜空だ。
点。
天。
天、と、星。
星つぶ。
紺青の闇と、またたくちいさな星。
おぼろげな光りたち。
ちょっとだけ答えはでた。
本人が死んでしまった以上、イキチの闇の色はわからない。
しかしこれは今、わかる。
闇は黒ばかりじゃない。
それどころか光りかもしれない。
「ん? どした?」
ユニシフスは薄闇のなか、となりに立つ妻を見おろした。
あんまりにも星の綺麗な夜だったから、ふたりで高台まで星空観察に来ていた。
ユニシフスは妻を、やさしい目で見ていた。
見あげるヨニイ。
目と目があう、ぴり、とヨニイの心身が反応する。
嗚呼、なにもかもがあたたかい
ずっと、このヒトと居たい
「じいちゃんのこと考えてたんだ。ほら、例のイキチさん」
「ああ、目の不自由だった」
うん、ふじゆうだった
でも。
じいちゃんが見られなかったのは、この世界だけだったきっと。
健常者がこだわる、永遠の魂にしてみたらほんの一瞬でしかないこの世界、それが見えないかわりに、この世界のどんな単位でも測れない崇高な深淵を見ていたきっと。
この世界を否定するんじゃないこの世界にはこの世界にしかない美しさがあふれているのはヨニイも知っている。
たとえばこの星空とか。
それからヒトの顔も、ヒトの数だけありそれらは個々にユニークなモノであること。
識別しきれなくとも、それは、わかるようになった。
イキチも、体と云う制約の解かれた魂になってから、見えるモノがさらに増えたことだろう。
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