イキチとユジコ

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イキチとユジコ

「ふふ」 「どうかしたか?」 「ねー、ユンさん。十次元くらいを理解できなきゃ、宇宙の真実は理解できない。あれホントかね?」 「んー、どうかな? 考えたことなかったな」  ふ、と息をついてユニシフスはヨニイを抱き寄せた。 「でも、そう云うこと考える好奇心あふれるヨニイが、俺はこの世界でいちばん好き」 「ありがと。私も、ユンさんがずっと好き」  強くハグしあった。  まわりに誰も居ないからかまわなかった。  天の川が、帯状の星々のきらめきがゆっくり動いていた。  それ以外のたくさんの星も連れて。  そのままに。  ありのままに。  夜の祈りのにおいのする空気が、ふたりを包む。 「ね、ユンさん」 「ん?」 「魂に還ったらどうしよ? それでもまだユンさんを追いかけてっていい? ラニアケアくらい一瞬で駈けぬけるよきっと」 「考えとく」 「えー、そんな」 「はは! 嘘。ヨニイならいいよ、来なよ」 「へへへ」 「さ、そろそろ帰ろっか。コンビニでアイスおごるから食べながら帰ろうよ」 「わーい、ごち!」  ふたりは車に乗りこんだ。  星が綺麗だ。  どこもかしこもは宇宙、それでしかない。  ただこの星は地球は、愛の場所だ。  みんなが想いあい手繋ぎあい、無限の宇宙からヴァカンスにくるとっときの場所だ。  宇とは四方上下。  宙とは往古来今。  宇宙。  古今東西すべてはすべて。  ただ魂が、黒であり黒でない闇のなか輝いていた。  よりそう者はよりそいあい、おぼろげながらに光りあって。  みつめあって。  宇宙のほとりで、ふたりはナニモノでもなく『空』だった。  ニキチとユジコと云う魂の名残りは、万感の想いで生前の姿だった。  ユジコか、お前さんか  ええ、そうですよおじいさん。あなたの妻ですよ  なかなかにべっぴんさんだなァ。はは、やっと見られたな、いいな  私もですよ。やっとあなたと、目をあわせてお話できた  お前さんはいつまでここに居る?  おじいさんとどこまでも、決まってるでしょう?  そうかそうか。ほれ、手  はいはい。あら、白杖は?  もうええんだよ。お前さんが居れば、ええんじゃよ
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