#06 黒いかどうかは調べればいい!

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 キンコーン、カンコーン。  4時間目終了のチャイムが鳴る。  さて、お昼ごはんの時間だ。  私は、家から持って来たお弁当を机に乗せると、向かいの席に友達の聚楽(じゅら)が座って来た。 「ヱル、お弁当一緒に食べよう」 「いいよ」  そんな代わり映えの無い会話が、二人の間に流れた。    私は、お母さんが作ってくれたお弁当を広げてお弁当箱を開ける。  お母さんはいつもの様に、緑黄色野菜たっぷりのお弁当を今日も作ってくれていた。  全く頭が下がる一方だと思いつつ、私は箸でブロッコリーを摘まむ。 「ヱルのお母さんは、えらいよね。ちゃんと色とりどりのお弁当を作ってくれて。家のお母さんが作るお弁当は、いつも茶色くて恥ずかしくなっちゃうのよ」 「……でもさ、茶色いお弁当って美味しいじゃない」 「……まぁ、それは否定しない。やっぱり高校生といったら肉よね。部活するとお腹減るし」 「わかるぅ。お腹空くよね。帰りに食べる、コンビニのから揚げが美味しいのよね。やっぱ部活の後は、肉よ!」  そんな話をしていると、ふらっと、私たちの横に人影が現れる。 「これ。花の女子高生が、なに肉、肉、云っているのよ。傍から聞いていると、ちょっと危険よ」 「ハハハ。美莉(みり)おかえり。委員会終わったの?」 「終わったわよ。で、戻ってきたらヱルが肉、肉云っているから、男に飢えているのかと思ってね。……っと、ヱルには閃貴(せんき)がいるから、飢えていないか」 「やめてよね美莉。私と閃貴はそういう仲じゃないの」   「ふ~ん~」 「へ~ぇ~」  目の前の二人は相槌を打つものの、私の言葉を全く信じていないと言わんばかりのイントネーションで答える。 「……それより、……ほら、聚楽の黒いお弁当の話」 「いゃいゃ、黒くはないわ! それじゃぁ真っ黒こげじゃない」 「……ハハハ、ゴメン、ゴメン」 「あっ、…………そう謂えばさ……」  聚楽が前かがみになり、急にこそこそと小声で話し始める。  私達も、聚楽にならって、前かがみになって、聚楽の内緒話を聞く体制を取った。  聚楽が周囲に目を光らせながら、口を開ける。どうやら、周りに知られてはマズい話らしい。  私と美莉は、聚楽の小声がギリギリ届く距離に顔を置いた。   「実は……、今ヱルが()()って云ったので思い出したんだけど……」 「なに?」 「男の人のアレって大人になると、黒くなるって本当?」  ボッ。  私と、美莉の顔が一瞬で赤くなった。 「じゅ、聚楽。こんな所で何云っているのよ! お昼の教室よ」 「いゃぁ、ヱルなら見たことあるかなって」 「……ある訳ないでしょ!」 「だって、閃貴の見たりとか……」 「見・て・い・る・訳・な・い・で・しょ・う・!」  私の声のボリュームが上がる。 「ちょっとヱル、ボリューム落として、ボリューム落として」  私は美莉に(なだ)められて、落ち着きを取り戻す。 「はぁぁ、聚楽。アンタ男子に人気あるんだから、そんな事云っちゃダメでしょう」 「だって、気になるじゃない? ちょっとヱル、スマホで調べてよ」 「……調べるって、何て検索するのよ」 「ん~……ペニス、黒色、なぜ? とか、そんな感じ?」 「仕方ないなぁ」  私は、机の上に置いてあるスマホを手に取り、検索エンジンにキーワードを入力する。  えーと、ペニス、黒……。っとそこまで入力したところで、私の背後からぬっと、黒い影が、スマホを覗き込むように近づいて来た。 「なぁ、ヱル。何を調べているんだ?」  私は、声の主へ慌てて顔を向ける。  すると、そこには、家族と同じくらいの年月をともにしている、幼馴染の閃貴が立っていた。 「なっ、なっ、なに見ているのよぉぉぉおおおお!!」  私は、検索しているモノを閃貴に見られたと思い、狙いを定めずに、閃貴にグーで殴りつけた。  しかし、次の瞬間想像もしない雄叫びが閃貴の口から漏れる。 「……ΣガっБばぐ※ΓД…………」  どうやら、椅子に座っていた私の拳は、閃貴の大事な部分と高さが一致したらしい。  故に、直撃を喰らった閃貴はその場に倒れ込んだのだ。  閃貴もまさか、私がそんな所に攻撃をするとは夢にも思わなかった事だろう。 「ごっ、ごめん閃貴。大丈夫?」 「あ~ぁ、ヱルのせいで閃貴の目が真っ白になっているよ」 「だっ、だって、閃貴が急に……」 「まっ、色は分からなかったけど、感触は掴めた感じね。でっ、どうだった?」 「そっ、そんなのわかる訳ないでしょう!」    あぁ……穴があったら入りたい。  因みに、後日私はこんな噂を耳にした。  どうやら、男子の間では、『ボールクラッシャー・ヱル』とのあだ名が出回っているらしい。  そんな恥ずかしいあだ名は、いやぁぁぁあああああ。
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