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柚野木 泉
「暑い……」
夏のある朝、うんざりするような蝉の声を耳にしながら俺は呟いた。ポケットからハンドタオルを取り出し、額を伝う汗を拭う。
まだまだ昇ったばかりの太陽が照らす空を見上げる。雲一つない晴天で、何故だかそれにもうんざりしてきた。
家の最寄り駅に着くといつもより人の波は減っていた。恐らく今週から学生が夏休みに入った影響だろう。
それでもホームに入るとそれなりの人で埋まっていた。今日も電車は満員だろうな。
「まもなく、三番線に電車が参ります。危ないですから……」
乗る予定の電車の到着のアナウンスが流れて、俺は眺めていたスマホをポケットに仕舞った。目の前に電車が滑り込む。人の流れに沿って電車に乗り込むと、冷房が効いてるはずの車内は人の熱気で蒸し暑かった。
まだまだ夏は始まったばかりだ。
俺はひっそりとため息をついた。
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