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第14話 相談と連れ去り
エミールに連れられて、新しく出来た街のカフェにやって来た。
新しいカフェは、可愛らしい外観とおしゃれで美味しそうなスイーツが売りということで、恋人たちや若い女の子たちで賑わっている。
私とエミールは、入り口近くの窓際の席に座った。
「恋人たちが多いね! 姉上も今度マリユスさんと一緒に来てみなよ」
「マリユス……。うっ……私、もうマリユスと会えないかもしれない……ううっ……」
「ちょっと! いきなり泣かないでよ! 何があったの?」
エミールは持っていたハンカチを私に渡すと、私が落ち着いて話が出来るまで待っていてくれた。
「昨日の夜、マリユスのお家の近くのカフェでマリユスが帰ってくるのを待ってたの」
「夜? 一人で? 最近、魔物があちこちで現れてるんだから危ないよ、姉上」
「でも、夜じゃないとマリユスに会えないでしょう? だけどマリユスにも怒られたの。令嬢が一人で夜遅くに出歩くなって……」
「そりゃ怒るでしょ。恋人に何かあったら心配だもの」
恋人……。私、本当にマリユスに恋人だと思ってもらっているんだろうか。
注文したクリームソーダを飲みながら私が想いに耽っていると、ティラミスを頬張っていたエミールが私の顔を覗き込んだ。
「姉上? どうしてそんなに必死なの?」
「うん……。私ね、マリユスに大事にされているのはわかってるんだけど……まだ一度も好きって言われたことがないの。だからマリユスが私のことを本当はどう思ってるのか知りたくて。それに、マリユスがアンナ姫専属の騎士に任命されたって聞いて余計に不安になっちゃったんだ」
「ふぅ〜ん。そうなんだ。でも、マリユスさんって寡黙な感じだから照れてるだけなんじゃない? 姉上がいるんだから、アンナ姫に心奪われるなんて絶対なさそうだし」
優しく話を聞いてくれるエミールに全てを話すと、だんだんと気持ちが軽くなっていくのを感じたがマリユスに対する不安は消えることはなかった。
それからいろいろな話をしてスイーツを食べ終えた私とエミールは、屋敷に帰るために支度を始めた。
「僕がお金を払っておくから、姉上は外で待っててよ」
「うん。ありがとう」
いい弟がいて幸せだなっと思いながら、私が外に出てカフェのドアの横でエミールを待っていると、ふと誰かが私の前に現れた。
「これはこれは。コレット様じゃありませんか」
「えっ、コルネイユさん?」
私の前に現れたのは、この間レストランで食事をご馳走になりブレスレットまでもらってしまったコルネイユだった。
「コレット様。この後、私にお時間をいただけませんか?」
「ごめんなさい。今、弟と屋敷に戻るところなんです」
「そうでしたか……。では、一つ頼みたいことがございます。私の目を見ていただけませんか?」
私は何のことかわからず、私を覗き込んできたコルネイユの目をじっと見てしまった。
すると急な眠気に襲われ、私はその場に倒れそうになってしまった。
「おや、こんなところで寝てはいけませんよ。あちらに参りましょう」
コルネイユは、完全に寝てしまった私の身体を軽々と抱えるとその場から歩き出した。
「姉上、お待たせ! あれ? 姉上?」
カフェからエミールが出てきた時には、私を抱えたコルネイユの姿はすでにどこかに消え去った後であった……。
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