第10話 護衛任務(マリユス視点)①

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第10話 護衛任務(マリユス視点)①

 城から隣国まで、国王と姫君を護衛する任務を任された王国騎士団の長い列がセリユーズ王国の大通りを通り過ぎていく。 沿道には、多くの国民が訪れ、国王と姫君に手を振ったり、騎士団にエールを送っている。 そんな中、大通り沿いに建っているコレットの屋敷の前に騎士団の列が差し掛かったのを俺は確認した。 きっとコレットは自室の窓からこちらを見ているだろう。 そう思い、俺がコレットの部屋の窓を見るため顔を上げると、そこにはやはり窓に両手を当ててこちらを見ているコレットが立っていた。 ふっ、と思わず笑みが漏れそうになったが、周りの他の騎士に気づかれるのが嫌でやめておいた。 俺の視線に気づいたコレットが、こちらに思い切り手を振っている。 いつもと変わらない可愛らしいその姿を目に焼き付けて、俺は再び任務に気持ちを切り替えるために前を向いた……。 ***  隣国に向かう途中の山道で、俺は姫君の様子が少しおかしいことに気づいた。 俺は、国王と姫君が乗る馬車のすぐ横で護衛をしている。 何気に馬車のほうを見た時、少し姫君の顔色が悪い気がしたのだ。  (もしかして、具合が悪いのか?)  そう思った俺は、騎士団の列から離れて先頭にいる団長の元に走った。 「失礼いたします団長」 「ん? どうした?」 「姫君なのですが、どうやら具合が悪そうに見受けられます」 「何? わかった。少し休憩を挟もう」  馬車を一旦止め、俺が姫君に水を持っていくと、心配そうにしている国王の横で姫君が馬車の椅子の背もたれに寄りかかっていた。 俺が姫君に声をかけると、姫君は差し出した水を受け取りそれを美味しそうに飲んだ。 「ありがとう。山道で馬車に揺られて少し酔ったみたいだったの。あなたが気づいて馬車を止めてくれて良かったわ」   「はっ。恐れ入ります」 「あなた名前は何と言うの?」 「マリユスと申します」  姫君は、俺の名前を聞くと跪いて下を向いている俺に顔を上げるように言った。 「マリユス。隣国に着いたら私の隣で護衛をお願いね」 「え? あ、失礼いたしました。承知いたしました……」  (俺が姫君の隣で護衛だって? とりあえず団長に報告しなければ……)  俺は複雑な気持ちで、再び隣国に向けて出発した騎士団の列に混じって歩き出した。
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