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第13話 後悔
「ふふふ……面白いものを見せてもらった」
暗く陰湿な城の奥の王座に座りながら、しもべの魔物が差し出す水晶に映し出された光景を面白おかしく観察する男、コルネイユ。
アンセルへの復讐のために、アンセルの妹であるコレットを利用しようと機会を伺っていた。
コレットに贈ったブレスレットによって水晶に映し出されているのは、コレットとその恋人らしいマリユスという男だった。
「ふむ。この男も騎士団の騎士なのだな。俺の計画の邪魔にならぬようにせねば……。
先程のこの二人の会話……ふははは……これは使えそうだ」
コルネイユはそう言って笑うと、すぐにセリユーズ王国にしもべの魔物たちを放ったのだった。
***
マリユスに大嫌いと言ってしまってから二週間が経っていた。
その間、セリユーズ王国の至るところで魔物が現れており、王国騎士団は連日その対応に追われていた。
そのため団長であるアンセルは城に常駐し、まだ一度も屋敷に帰ってこない。
アンナ姫専属の騎士に任命されたマリユスも、同様にアンナ姫の側に常に控えていると思う。
なんで大嫌いなんて言ってしまったんだろう……。
私は、あの日からずっと自分が言った言葉を後悔していた。
もう、マリユスは私と会ってくれないかもしれない。
自分の気持ちを伝えに言ったのに、なんでこんなことになってしまったのか。
「はぁ……」
思わずため息が漏れると、それを聞いたエミールが私に声をかけた。
「姉上……。最近ずっとため息ついてるよ? 何かあったの?」
「あ、ごめんね。実はね……大切な人とケンカしちゃったの……。私のせいなんだけど」
「大切な人って? あ、もしかしてマリユスさん?」
「えっ? な、なんで?」
「そんなのとっくにみんな知ってるよ? 知らないのは兄上くらいだよ」
マリユスと付き合っていることがエミールに知られていたことに焦っている私を呆れ顔で見ながら、エミールはしれっとそう答えた。
「みんな知ってたの?」
「当然でしょ。姉上、わかりやすいんだもん」
「そっかぁ……」
みんなに知られないように振る舞っていた自分が今更ながら恥ずかしい。
早くみんなに伝えて、マリユスも屋敷に招いておけばよかった……。
「ケンカって、マリユスさんが騎士団の任務で忙しくて会えないから? 姉上もさ、もっとマリユスさんのこと信じてあげなよ」
「信じてるわよ! でも、不安なの!」
「あー、はいはい。話聞くよ? 気分転換に最近街に新しく出来たカフェに行ってみない? 美味しいスイーツを食べながら聞いてあげる」
そう言ってウインクをするエミールに連れられ、私は新しく出来た街のカフェに向かった。
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