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第17話 復讐
私にニヤけた笑顔を向けるコルネイユを見て、私の背中に嫌な汗が伝っていった。
しかし、怖がっている素振りを見せないように私は静かな口調でコルネイユに尋ねた。
「コルネイユさん……どうしてこんなことをするんですか?」
するとコルネイユは、突然苦虫を噛み潰したような顔で怒りをあらわにして私に言った。
「どうして? だと! そんなもの、復讐のために決まっているだろう!」
「復讐?」
「そうだ。俺は、お前の兄であり王国騎士団団長のアンセルという男に復讐をするためにお前をここに連れて来たのだ」
「お兄様に復讐だなんて……。どういうことですか?」
コルネイユは、イライラしながらその辺りにあった木の小さな椅子に勢いよく座って私を睨みつけた。
「俺は、このセリユーズ王国を我が物にするため魔物をこの国の彼方此方に放っている魔法使いなのだ。それをあの……忌々しいアンセルという騎士団長めがことごとく邪魔しおって! 嗚呼、思い出すだけでもイライラする!」
コルネイユはそう言うと、椅子から立ち上がり忌々しそうにその椅子を思い切り蹴り飛ばした。
ドカンッ! と大きな音がして、椅子が粉々に砕け散る。
(!!!)
私は恐怖で声を出しそうになったが、アンセルのことを悪く言われたことへの反発からコルネイユに食ってかかった。
「お兄様は国のために魔物を退治しているの! 国を守るのが仕事なのだもの、当然でしょ!」
「ほう。元気があるじゃないか。優秀な兄がいて良かったなぁ。まぁ、お前を助けに来るかどうかは見ものだがな。ワハハハ!」
「お兄様は絶対に来てくれるわ!!!」
「いつまでそうやって強がっていられるかな? 今、さらに多くの魔物をセリユーズ王国各地に放っているからお前の兄もお前の恋人もどちらもお前を助けに来ることは出来ないだろうな」
「恋人って……マリユスのことも知ってるの?」
私が驚いた顔でコルネイユを見ると、コルネイユは面白そうに笑って答えた。
「お前に贈ったブレスレット。それによってお前の行動を全て把握していたのさ」
(ブレスレット?)
私は、コルネイユに贈られたブレスレットを咄嗟に外そうとしたがどうやってもそれを外すことが出来ない。
そんな私の姿を、コルネイユは心の底から楽しそうに笑いながら見ていた。
「フフフフ。そのブレスレットはお前を心の底から愛する者でしか外せないのだ。それに、そのブレスレットを身につけている限り、お前はここから逃げることは出来ない。諦めるんだな」
(そんな……)
「ここで野垂れ死ぬがいい……それが俺からアンセルへの復讐だ! ワハハハ!」
高笑いするコルネイユの足元で、私は絶望でもう何も考えることが出来なくなっていた。
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