53人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
第19話 救出
コレットが不審な男に攫われたと聞いたマリユスは、居ても立っても居られずその場から立ち上がった。
「マリユス? どうしたの? 顔が真っ青よ」
隣の長椅子に座っているアンナが、そう言ってマリユスを見上げた。
マリユスは拳を握りしめると、意を決したようにアンナの前に跪いた。
「アンナ様、無礼をお許しください。私は今から恋人の救出に行って参ります」
「何ですって! 恋人? 私の護衛を放り出して? そんなこと許さないわ!!!」
マリユスに恋人がいたショックと、自分を置いて行ってしまおうとするマリユスに対してアンナは怒りをぶつけた。
「どんな処罰を受けても構いません! たとえ王国騎士団を追われたとしても……」
マリユスはそう言うと素早く立ち上がり、アンナに一礼すると急いで部屋から出ていった。
「待ちなさいマリユス!!!」
部屋に控えていた他の団員が顔を見合わせる中、悲鳴にも似たアンナの声だけが部屋の外の廊下まで響き渡っていた__。
***
もうどれくらい時間が経ったのだろう……。
薄暗い部屋で、床に転がるように放置されてから私はずっとそう考えていた。
遠くまで連れて来られたと思っていたが、コルネイユの話によるとここはセリユーズ王国にある廃墟になっている小さな屋敷らしい。
今頃、アンセルもマリユスも魔物の討伐で他のことを考えている余裕などないはずだ。
もう頼れるのは自分しかいないと、必死に身体を起こそうとするがコルネイユの言う通りブレスレットのせいで身体が全く動かない。
本当にこんなところで死ぬしかないんだろうか。
もう一生マリユスに会うことが出来ないの?
そんなの嫌だ……。
不本意で、「マリユスなんて大嫌い!」なんて言ったまま死ぬなんて。
そんな自分が情けなくて涙が溢れてくる。
(マリユス……)
溢れる涙を抑えようと、最愛の人の名前を心の中で呼びながら私が目を閉じたその時。
ドンッ!!!
突然、轟と共に薄暗い部屋のドアが破られ砕け散った。
「な、何だ!?」
何も出来ない私を面白そうに見下ろしていたコルネイユが、焦ったようにドアのほうを振り向いた。
すると、コツコツと足音を響かせ部屋の中に入ってくる人影がコルネイユの向こうに見えた。
「やっと見つけた……」
(この声!!!)
「お、お前は! な、なぜここにいる?」
コルネイユは、その人影の顔を見ると驚愕したように叫び、狼狽えて一歩後ろに下がった。
寝転んでいる私が見上げた先。
そこには、私が待ち侘びた最愛の人が毅然とした態度で剣を構えて立っていた。
最初のコメントを投稿しよう!