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第20話 心の底からの愛
「やっと見つけた……」
手当たり次第に廃墟を探していたのか、マリユスは少し息を切らし低い声でそうつぶやいた。
両手に剣を構え、怒りにも似た強い眼差しでコルネイユから目を離さない。
そんなマリユスの姿に、コルネイユは恐れをなしたのか一歩後ろに退いた。
「お、お前は! な、なぜここにいる?」
「捕らえた魔物から聞き出したんだ。廃墟としか言わないから少し手間取ったが」
マリユスはそう言うと、ゆっくりとコルネイユに剣を構えたまま近づく。
焦ったコルネイユは、自分の後ろの床に転がっていた私を盾にするように羽交締めにしてマリユスからさらに距離を取った。
「近づくな! お前の恋人に何かあってもいいのか?」
マリユスに向かって叫ぶコルネイユに羽交締めにされながら、私は考えていた。
マリユスが助けに来てくれた。
それだけで、絶望で打ちひしがれそうになっていた気持ちが嘘のように晴れていく。
これまで、散々自分に酷い仕打ちをしたコルネイユを絶対に許さない!
私は、私の身体を後ろから締め付けているコルネイユの腕に思いっきり噛み付いた。
「グゥ!!! 何をする小娘!!!」
コルネイユは私を自分の腕から引き剥がすと、噛まれた腕を庇うようにして私を強い力で突き飛ばした。
「きゃあ!!!」
ギュッ
(へ? 痛く、ない、?)
「ったく! コレット、あまり俺を心配させるな!」
コルネイユに突き飛ばされ、どこかにぶつかるとばかり思っていた私がそっと見上げると、そこには私を素早く受け止めてくれたマリユスの顔があった。
「マリユス! 来てくれてありがとう」
「当たり前だろ」
私が笑顔でマリユスを見つめると、マリユスは口数は少ないものの嬉しそうな顔をしている。
こんなマリユスを見るのは初めてだった。
「勝ったと思うなよ、マリユス。その女の手首に付けられたブレスレット。それがある限り、俺の魔力でその女を殺すことも出来るのだぞ」
見つめ合う私とマリユスを忌々しそうに見ながら、コルネイユが私の手首に付けられたブレスレットを指差した。
「ブレスレット?」
マリユスが、私の手首に付けられたブレスレットにそっと触れる。
「そうだ。そのブレスレットは、コレットを心の底から愛する者でしか外せない。マリユス、お前ではそのブレスレットは外せないだろう? フフフフ」
そう言って愉快に笑うコルネイユを、マリユスは冷ややかな目で見つめながら不敵な笑みを浮かべた。
「こんなもの……」
マリユスはそうつぶやくと、私の手首から簡単にブレスレットを外してそれをコルネイユに向かって投げ捨てたのだった。
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