52人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
最終話 そのままの二人で
「コレット……」
近づいてくるマリユスに応えようと、私はそっと目を閉じた……。
その時。
「コレット! マリユス! 無事か?」
部屋の廊下に、私とマリユスの名前を呼ぶ声とドカドカとこちらにやってくる何足もの足音が響いた。
(!!!)
あと数センチで唇が触れ合うところで、私とマリユスはお互いに距離を取ってこちらにやって来た人物を見つめた。
「お、お兄様!!!」
「団長!!!」
なんと先頭に立ってこちらにやって来た人物は、魔物の討伐を終え駆けつけたアンセルであった。
「コレット! マリユス! 二人とも無事で良かった……」
アンセルは、私とマリユスを抱き寄せると安心したように息を吐いた。
私がそっとマリユスの様子を伺うと、さっきまでのカッコよかったマリユスと違い、小さな子供のように頬を染めて嬉しそうにしている。
(大好きな団長に抱き寄せられて赤くなってるマリユス可愛いな)
「助けに来るのが遅くなってすまない。予想外に魔物の数が多くて手こずっていたんだ……。しかし驚いたな。まさかお前たちが付き合っていたとは」
(!!!)
アンセルに知られてしまった……。
私とマリユスが目を見合わすと、アンセルは笑いながらさらにぎゅっと私とマリユスを抱きしめた。
「弟のように思っているマリユスが、まさか本物の弟になる日が来るなんてな。はは」
「そんな、まだ早いですお兄様!」
私が恥ずかしさから横を向くと、マリユスはアンセルの足元に跪いて下を向いた。
「団長から弟のように思ってもらえているなんて恐悦至極に存じます。このマリユス、コレットを一生大事にすると誓います」
「マリユス……」
マリユスの言葉に思わず涙が溢れる。
暗く絶望していた長い一日は、最後に大好きな人たちに囲まれた幸せな日に変わって終わりを迎えたのだった。
***
コルネイユの事件から月日が流れ、魔物の出現もなくなったセリユーズ王国は平和な日常を取り戻していた。
マリユスは、アンナの専属騎士からは外されたが悪者から国を守ったということで王国騎士団を追われることはなかった。
今はアンセルの手足となり、最前線でいろいろな任務に当たっている。
私は、あれからすぐにマリユスと婚約して毎日花嫁修行に励んでいる。
今日は久しぶりのマリユスとのデートの日。
私は、朝早くから頑張って作ったお弁当を持って待ち合わせ場所の図書館に急いだ。
本が好きなマリユスは、きっと早くから図書館に来て本を読んでいるだろう。
図書館の入り口をくぐり、そっと中を覗いてみる。
(あっ……)
真剣に本を読む綺麗な横顔を見つけた私は、心の底から幸せな気持ちになる。
どんな高級なレストランやお店に行っても得られない幸せ。
私に気づいて笑顔を向けてくれる愛しい人と、これからの人生背伸びせずそのままの二人で歩いていこう!
完
最初のコメントを投稿しよう!