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第3話 団長絶対!?
あぁ、またか……。
私は、嬉しそうな顔をしているマリユスを見ながら諦めてため息をついた。
普段、すごく寡黙で一言二言しか話さないマリユスは、兄アンセルのことになると別人のように話し出す。
そう。
マリユスは、『団長絶対』男子なのだ。
「お兄様じゃなくて、マリユスが美味しく卵焼き食べてくれたか聞いてるの!」
「ん? 美味しかったよ。団長の隣だったから余計に」
「そう……」
(もう! お兄様のバカ! なんでマリユスの隣に……)
私は、魔物討伐時のアンセルの活躍を嬉々として話しているマリユスの顔を眺めながら、今度の騎士団の差し入れにはアンセルの嫌いな物を入れてやろうと心に誓ったのだった。
***
『聖リーヴル学園』在学中、私は三年間ずっとマリユスと同じクラスだった。
初めは、なんて綺麗な人なんだろうという印象で近寄ることが出来なかった。
そのうちにお互い生徒会の役員をすることになり、成績も優秀で生徒会の仕事にも真面目に取り組むマリユスの姿に惹かれていった。
しかし、この美貌である。
マリユスの近くにはいつも女子学生がたくさん群がっていた。
私は、マリユスに告白する女子学生がたくさんいるのを横目に見ていたが、マリユスは特定の恋人を作る気がないようだった。
そしてマリユスに片思いする時間が過ぎ去っていく中、もうすぐ卒業間近という時。
私は、意を決してマリユスに告白をしたのだった。
「ずっと好きだったの。よかったら私とお付き合いしてくれませんか?」
「うん。いいよ」
一世一代のような気持ちでした告白に、マリユスはあっさりと合意した。
少し拍子抜けした私だったが、念願叶って晴れて私とマリユスは恋人になったのだった。
今考えると、もしかしてマリユスが私と付き合うのに合意したのは私がアンセルの妹だからなのだろうかと疑ってしまう。
それくらいマリユスのアンセルへの尊敬心は強いのだ。
***
心地よい風が吹き、綺麗な花々が気持ちよさそうに揺れている草原に二人で座る。
いつもここから見える街並みを二人で眺めるのが私は好きだ。
私は、隣に座るマリユスの肩にそっと寄りかかってみる。
付き合い始めてから今まで、私とマリユスは手しか握ったことがない。
そろそろキスくらいしてくれてもいいのに……。
しばらく街並みを眺めながら私がそう思っていると、マリユスは白シャツのポケットから懐中時計を取り出した。
「ああ、もうこんな時間か。そろそろ帰ろうか」
「……」
懐中時計を仕舞って立ち上がろうとするマリユスの腕に、私はぎゅっとしがみついた。
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