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割烹着にほっかむりの金井さんが、はたきを手に私の横に立った。背中が曲がって、元々小柄な金井さんは私の肩までしか身長がない。だから、金井さんが届かない棚の上は私が片付けていた。
「この……木箱の間に挟まっていたみたいです」
「こんなところに? なんででしょうね――ああ古い写真だこと。先代のものかしら……」
金井さんも、私が手に持った写真を訝し気に眺めている。
「結婚式……でしょうか? この写真」
白黒の幕の前で、黒い着物を着た人たちが長い座卓について、食事をしているワンシーンだ。どの人も、それはそれは嬉しそうに笑っている。
黒い着物も、喪服とは限らない。黒紋付なら正礼装だから、結婚式でも着られるはず……。
でも、金井さんはしばらく躊躇ってから、
「いいえ、お葬式です」
と答えた。
――私は戸惑って、
「そう……なんですか? でも、写ってる人、みんな嬉しそう……」
「……これは、先代の弟さんの奥さんのお葬式です」
先代の弟さん……とすると、婚約者の次彦さんのお祖父様の弟さんか……。
その時代なら、確かに白黒写真だろう。
そう考えながら、金井さんの言葉にふと引っかかるものを感じた。
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