一枚の写真

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「……どうして、亡くなったんでしょうか? その方は……。ご病気か何かで……?」  写真に写った範囲の外……葬儀壇を想像してみる。  どんな遺影が飾られているんだろう……。 「健康な方でしたよ。まだ二十代でしたか。――突然心臓麻痺を起こされて……」  二十代……私と同じだ。  そう考えて、鼓動が大きくなる。  そして……次男の嫁であることも、同じ……。 「孤児として育った方で……入籍と同時に、法外な額の生命保険に入っていらして」  金井さんの言葉に、全身からどっと汗が吹き出した。  今日呼び出された手続き……保険がどうとか言っていなかったか。  凍り付いた私の手から、金井さんは写真を摘まみ上げ、 「この大きなお屋敷でしょう。維持するだけでも相当かかるみたいです」  と言って、そっと私の背中を押した。  それは、一歩を踏み出すのに、十分な後押しになった。  ――私はそのまま、蔵を出て、屋敷を出て……二度と、その家の門はくぐらなかった。その後しつこく、次彦さんからの着信が続いたが、数週間でぱったりとそれも途絶えた。  本当に、あの写真がお葬式のものなのかはわからない。  実際は、紅白の幕だったのかも知れない。  でも、あの黒い着物の人たちの笑顔が腹黒く見えた自分の直感を、信じようと思った。 ―終―
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