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雪うさぎ
前夜の雪が嘘のように晴れ渡った空の下、秋山潤(あきやまじゅん)は大学への道を歩いていた。
場所は鳥谷公園……人呼んで人無し公園。痴漢や変質者が頻繁に出没すると有名な公園で、今も人っ子一人いない。潤がこの公園を通るのはただ単に大学への近道だからだ。
人が通っていない公園の道は、雪がまだ汚れず真っ白なままだ。
「あれ?」
潤はふと足をとめた。その先にはいったい誰が作ったのだろうか雪うさぎが一体置かれていた。
潤と雪うさぎの南天の目と目が合った気がした。
晴天の下で雪うさぎは少し暑がっているように見える。このままここに置いたままだと、午後の日差しで溶けてしまうだろう。
「こんなところにいると、おまえ溶けてなくなってしまうぞ」
潤は一人呟くと、そっと雪うさぎを持ち上げ、木々が鬱蒼と茂り日のささない場所へと移動させた。
「我ながららしくないことしてるな」
潤は苦笑するとその場を後にした。
このちょっとした出来事が、のちに潤の運命を大きく変えることになるとは、勿論潤も知るところではなかった――――。
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