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すると彼は振りむき、前髪をかき上げながら、悩ましげな流し目でわたしを見つめてきた。
「じゃあ……キス、してくれます?」
「えっ?」
急変した彼の表情に驚いて、思わず凝視してしまった。
切れ長で明るい茶色の瞳。すっきり通った鼻筋。シャープな顎のライン。
みんなが騒ぐだけある。
麗しすぎる。
国民的イケメンタレントたちと比べてもまったく遜色ない。
驚きに対する身体の反応は後からやってきた。
ドキドキと心臓が高鳴る。顔が紅潮してきたのもわかる。
「わ、わたしのキスなんてお礼にならないでしょう?」
慌てるわたしに、浅野くんは耐えきれなくなったように笑い出した。
あ、からかわれたのか。もう。
「よかった。少しだけど顔色、戻りましたね。さっきは真っ青で倒れるんじゃないかって心配になったけど」
「も、もう、年上をからかわないでよ」
彼は何も言わず、微笑んでわたしの額を指先でつんとつついた。
つ、つん? つんって……
「今の梶原さん、可愛すぎるんです。会社にいるときとまるで違うから反応が面白くて、つい」
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