蕩ける愛であなたを覆いつくしたい~最悪の失恋から救ってくれた年下の同僚に甘く翻弄されてます~

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 「おはよう」とリビングに入ってゆくと、黒いエプロンをつけた浅野くんがアイランドキッチンに立っていた。  「おはよう。眠れました?」  そう言って微笑む彼に、一瞬、くらっと眩暈のようなものを感じた。    イケメンがエプロンしてキッチンに立ってるなんて。  もう、このシチュエーション、ズルすぎるんだけど。  心の態勢をなんとか立て直し、わたしは答えた。  「うん、今までぐっすり」  「それはよかった」  そういう彼は明らかに寝不足の顔をしていた。  「浅野くんは眠れなかったの?」  「いや、寝る前にゲームをはじめちゃって。休みの時にしかできないから」  「そっか。ねえ手伝うよ」  彼はガスコンロの火を止め、鍋のなかのものを(うつわ)によそいながら言った。  「もうできましたから、そこに座っててください」  見ると、配膳はすっかり終わっていて、あとは彼が手にしている器を置くだけになっていた。    「もう何から何までお世話になって、本当、感謝しかない」  「もう聞き飽きましたって。そのフレーズ」  彼は苦笑しながら「どうぞ」と湯気の立っている茶碗をわたしの前に置いた。  粉引の大振りな器の中身はお粥だった。  「わざわざ作ってくれたんだ」
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