蕩ける愛であなたを覆いつくしたい~最悪の失恋から救ってくれた年下の同僚に甘く翻弄されてます~

33/67

1313人が本棚に入れています
本棚に追加
/67ページ
 身体からすべての力が抜けてゆくような気がした。  あんな男と1年近くも付き合っていたかと思うと、本当に自分が情けなくなった。  心の隅にほんのわずか残っていた、宣人への未練が、きれいさっぱり消えてゆくのを感じていた。 「別れることになって、ほんと正解だったよ」  正美に言われ、わたしはただ頷きかえした。 ***  正美は一緒に大崎まで来てくれた。  ただ、居候の身なので、部屋に上がってもらうわけにもいかず、マンションの前で別れた。 「今日はありがとう。今度なんか(おご)るね」 「何、水くさいこと言ってんの。このぐらい、お安いご用だって」  屈託のない笑顔を残して、正美は帰っていった。  浅野くんはまだ帰っていなかった。  ああ、そういえば、今日は接待で遅くなるって言っていた。  光も音もない部屋は、いつもよりさらに広く感じられた。  ひとりきりだと、確かに寂しい。  浅野くんの言葉が今は実感できる。    とりあえず、荷物から明日必要な服を出し、カップめんを食べ、ぼんやりとした頭のままで、シャワーを浴びて、洗顔した。  やるべきことを終えてしまうと、宣人のことが、嫌でも頭にのぼってくる。
/67ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1313人が本棚に入れています
本棚に追加