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「えー、もしかして伊川さんと梶原さんって?」と留奈が興味深々といった様子で聞いてきた。
「あれ、知らなかった? 付き合ってるんだよ、ふたりは」
と、言ったのはわたしの同期で隣の席の川崎正美だ。
彼女は黒髪ショートカットでパンツ・スタイルが多く、ブラウンの長髪、スカートが多いわたしと対照的。
でも、入社1日目から意気投合した、わたしの大親友だ。
ふと、わたしを見る留奈の目が異様に輝いた気がした。
「へえ、そうなんですねぇ。いいなあ、伊川さん、カッコいいし、仕事もできるし。わたしもあんな彼、欲しいなぁ」
「ほら早くコピーしてこないと、伊川にどやされるよ」と正美が指摘され、留美は「はーい」とコピーに向かった。
そんな感じで、まあ、ちょっと困った後輩に手を焼いてはいたけれど、上司や他の社員との関係は良好だったし、恋人とも問題なく過ごしていたし、おおむね良好な日常を送っていた。
その1週間後に、どん底に突き落とされることになるなんて、このときのわたしは知るよしもなかった。
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