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「伊川さんとは他人行儀だな。茉衣、話がある」
「何言ってんの。話すことなんてないでしょう」
外に出ようとすると、宣人はドアの前に立って阻んだ。
「そこ、どいて」
「なあ、いい加減、機嫌直せよ。茉衣の作るメシ、食いたくなった」
今更、どの口でそんなことが言ってるんだろう。
呆れて、言葉も出ない。
「この間も言ったでしょう。もう無理。それに彼女は? 岡路さんはどうしたの」
「はっ。あいつにまともに飯とか作れるわけないだろう。それに付き合ってるわけじゃない。婚約者がいる。どこぞの御曹司らしい」
はあ、お互い遊びだったわけか。
まあ、今となってはどっちでもいいけど。
わたしは大きくため息をついた。
それにしても、復縁できるなんて、本気で思っているんだろうか。
あのとき、宣人が浮気の原因はわたしにあると言ったことがどうしても許せない。
あれは疑いようもない、宣人の本心だったから。
「縒りを戻す気なんてまったくないから。ねえ、もう行かなきゃ。そこどいて」
「そんな冷たいこと、言うなって」
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