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その日から2日間、実家に滞在した。
その後も母の具合は良好だったので、わたしは予定を切り上げて1日早く帰ることにした。
急な外出で家事もたまっているし、早く宣人の元に帰りたかった。
東京に到着したのは土曜日の午後10時ごろ。
列車に乗ったとき、宣人に連絡を入れたけれど、まだ既読はついていない。
この時間だから、もうとっくに食事は終えているだろうと思い、自分も駅で適当に済ませてから、帰宅の途についた。
部屋についたとたん、目に入ってきたのは、見覚えのあるレースをあしらったベビーピンクのパンプスだった。
そして……
寝室のドアの隙間から漏れているのは、光だけではなかった。
女の甘ったるい声も耳に飛び込んできた。
「あ、宣人さん、ねぇ……そんなことしたらだめだって……あァんっ!」
「だめなんて思ってないくせに、ほら……もっと脚、開けよ」
「やん、エッチぃ」
会話だけではなかった……
衣擦れ、肌と肌がぶつかり合う音。荒い息遣い。
そんな、あからさまに淫らな物音も、否応なく耳に入ってくる。
「肌、すべすべで真っ白だな」
「ねえ、梶原さんとどっちが綺麗?」
「そりゃ……留奈だ。手触りが違う」
「あーん、もお、宣人さん大好き」
互いを貪ることに夢中になっている彼らは、玄関ドアが開いたことなど、全く気づいていないらしい。
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