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どういうこと……いつの間にあの二人……
わたしは留奈の視線を思い出し、ハッとした。
横取りを狙ってたってこと?
頭に血が上るって、こういうことを言うのか。
はじめて覚える感覚に卒倒しそうになりながらも、わたしは足音を忍ばせてキッチンに行き、ガスコンロに置きっぱなしになっていたパスタ用の大鍋を水で満たした。
そして鍋を両手で持ったまま、足で乱暴に寝室のドアを開け、ベッドで絡み合っているふたりの上に一気にぶっかけた。
「うわっ!」
「キャーッ! やだ、な、何!」
驚いてこっちを見た宣人は、ベッドの横で仁王立ちになっているわたしを見て目をむいた。
「茉衣。おまえ、帰るの明日じゃ……」
手に持っていた鍋を放り出すと、テーブルに当たって派手な音を立てた。
その勢いのまま、わたしは宣人の頬を平手で思いきり打った。
手のひらがじんとするほど強く。
「最低!」
そう言い捨てたところまではしっかり記憶に残っている。
でも、それからあとのことはよく覚えていない。
こんなところには、一秒たりともいたくない。
頭にあったのは、それだけだったように思う。
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