第一部 序章 ことの始まりは突然に

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第一部 序章 ことの始まりは突然に

「ちょっと、おにいちゃん、さっき、わたしのお父さんがここにきませんでしたか?」  うえっ……またボケてやがる……。  俺は心の中で思う。しかしそんなことはおくびにも出さず、目の前に現れたばあちゃんに笑顔を向ける。 「キョウコさんの旦那さんなら、さっきお仕事にいきましたよ。一緒に見送ったじゃないっすか!」 「はあはあ、そうでしたかねえ、こりゃあ、あいすみません、耄碌厄介ばばあはこれだから困りますねえ」 「キョウコさんは、いまからお風呂に入りますよ! そのために俺が来たんスから」 「あらやだ、おにいちゃん、こんなしわくちゃの老いぼれを捕まえて、何を言ってるの? 恥ずかしいわよ」  ちげーよ、俺はアンタの孫だよ。いまからアンタを風呂に入れるんだよ。 「俺は旦那さんに頼まれてやって来た、三助っす!さあさあ、行きましょ 」 「粋なことをしてくれるもんだねえ、あの人も。もったいないもったいない。でも、折角だし、お言葉に甘えさせていただきますから、背中を流してくださいな」 「お安い御用っす。 さ、風呂にいきますよ」
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