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筒原さんの趣味は、読書だ。休日には駅前の大型書店に行って、何時間も本を物色するのが楽しみなのだという。小説が好きだと言っていたが、読むジャンルには隔たりがなく、俺にはよくわからない小難しそうな内容から、ライトノベルまで。目についた本を、手当たり次第に買って読んでいるらしい。ずっと独身を貫いてきたから出来ることよと、笑っていたことがあった。
そんな彼女の口から、「異世界転生」という言葉がするりと出てきたのには納得だ。だが、この状況に一番順応しているのが筒原さんだということには納得がいかない。
超常現象だ。本やアニメの中だけで起こるようなことが、実際に起こっている。それとも俺が知らないだけで、自分たちは本やアニメの中の住人なのだろうか。冗談はさておき、訝しげに筒原さんを見つめる。小説の読み過ぎで、現実と空想の区別がつかなくなったんだろうか。あるいは知識の積み重ねで、何が起こっても動じなくなったのだろうか。
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