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近所にできたオシャレなカフェ。
開店から数日経過した今日、訪れたのだが、お祝いの花がまだたくさん店内に飾られていた。
でもその一つを見た時、私は息を飲んだ。
ズタズタに切り裂かれた花だけで作られたお祝い用の花輪。本来、開店を祝う言葉を綴る場所には、たった一言『呪』の文字。
こんな物を、どうして客に見える場所に飾っているのだろう。
ひたすら花輪が気になり、店員や周囲の客を眺めたが、どうやらその花がそう見えているのは私だけのようだった。
自分でも、人より少し霊感が強い自覚があるけれど、花がこう見えるのはそのせいだろうか。だとしたら、私に見えているのは、この花の送り主の怨念なのかもしれない。
うかつに関わってとばっちりを食うと嫌だし、何より、私が見えているもののことを話して信じてもらえるかも怪しい。
なので私は、店に人に花のことは告げずに店を後にした。
それからおよそ半年。
華々しく開店したあのカフェはあっけなく閉店し、店があった建物には、今はテナント募集の貼り紙が貼られている。
あのカフェが閉店してしまったのは、あの日見た花が撒き散らした呪いのせいなのだろうか。
今はもう、花どころか道具一つとないがらんとした店内。窓の外からそれを眺め、私はそんなことを思った。
開店祝いの花…完
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