生き死に返る条件

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生き死に返る条件

「えー、三上楓(みかみかえで)、東京都大田区在住。仕事はデパートの洋菓子販売員。間違いないわね? アンタのことよね?」  名前を問われて、楓はこくこくと素直に頷いた。 「OK。じゃあ、もっかい言うね? 覚えてね? アタシも忙しいんだから」  随分浮世離れしているというか、何なら人間とも言いづらい風貌をした人物は楓に念を押す。   (お……お坊さん……?)    頭は丸坊主で真っ白い袈裟を着て僧侶のような出で立ちだ。  だが、瞼には金色のアイシャドウを塗り、リップラインくっきり引かれた唇にはミルクティー色の口紅が艶々と輝いていた。楓が勤めているデパートの外資系コスメブランドの店員を彷彿とさせる。    しかし、明らかに違うのはその体格。椅子に座っているから全長は分からないが、ゆうに10メートルはあるだろうか。僧侶よりパリピ大仏という言葉がしっくりくる。 「でね、アンタを生きらせてあげようって言ってんの」 「だ、だから、結構ですと言っているんです」  パリピ大仏はこれ見よがしに深いため息をついた。
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