選択の時

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 フランシスは静かにパトリシアを問い詰める。 「そんな……!! 言いがかりです! 私が何のためにそんな真似をする必要があるというのです!?」 「お茶会の為さ」  被せるように答えるフランシスの声にパトリシアは息を飲む。いつも優柔不断で優しいフランシスとは違う。何の感情も伴わない、静かで無機質な声。  まるで罪状を読み上げるようにフランシスは言葉を続ける。 「パトリシア、君がことあるごとに高級な買い物をすることも勝手に城の増築をすることも目をつぶって来た。だけど、自らが王のようにふるまうのはいただけないね。国王代行として国政を私物化していることは知っていたよ。茶会に招いている御夫人たちの夫が管轄している領地の税を、僕に黙って横領していただろう?」 「そ……それは……」 「茶会の御夫人たちもこの話には噛んでいるのかな? 彼女らの夫は知っているの? 女性同士毎日のように秘密の花園で内緒話じゃ逆に目立ってしまうものだ」 「だ……だって……だって……! フランシス様ったら私の我儘なら何でも叶えてくださると言ったではないですか! それなのに領地に入るお金はほとんど分配してばかり……!!」 「私欲に走るのは違うよ。民からの税金は治水や町の整備、学校や病院への支援のために使うためのものだ。君のお菓子を買うためのものじゃない」  フランシスはパトリシアに一歩一歩ゆっくりと近づく。
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