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パトリシアが連行された後、フランシスは深いため息をついた。
「大丈夫か?」
「……ああ。僕は駄目だね。君にもアナベルにも随分と迷惑をかけた。パトリシアの悪行を暴くためとはいえ、酷なことをさせたね」
「俺の力はお前が見出してくれた力だ。お前の命に従うのは当然だ」
エデルドゥールはしばし沈黙し、口を開く。
「……すまない、フランシス。アナベルのことを――」
「初めて聞いたよ」
「……?」
「僕以外の人間が君のことを“エデル”と呼ぶのを」
「……」
「アナベルのことは好きだけれどね、僕は君のことだって大好きだよ。知っているだろ?」
「フランシス……」
寂しそうに笑った後、フランシスは神妙な顔になる。
「ところアナベルは……?」
「……まだ眠っている」
「まさか……血の共有が間に合わなかったのかい……!?」
エデルドゥールは空を見上げた。澄み切った空の青さに目を細める。
「目を覚ますさ」
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