選択の時

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「おかえり」  その声に弾かれるように楓はぱちんと目を開ける。  視界に広がるのはどこまでも真っ白な世界。 「そうか……私……また死んだんだ……」  エデルディールは、傍にいない。これは天界で告げられた条件が達成されたということなのだろうと楓は理解した。   「いいえ? クリアならずよ」  聞いたことのある声が耳に届き、ばっと顔を上げる。楓の頭上のはるか上に裁判長と呼ばれていたあの大きな大仏様が見えた。   「パリピ大仏様!!」 「ウケる! なんそれっ!!」  ツッコミを入れて笑ったのは鬼ギャルだった。裁判長はぎらりと睨み、深いため息をついて楓を見下ろす。 「現代人って面白いわねぇ……次の輪廻対象者は現代日本に飛ばそうかしら」 「あ、あの! クリアならずってどういうことですか?」 「死にたけりゃ結婚しなさいって言ったでしょ? でも実際結婚する前に戻ってきた。だから、クリアならず」 「あ……そっか……じゃあ私はやっぱり地獄いき……」  楓は残念そうな声で呟く。
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