吸血妃の目覚め

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吸血妃の目覚め

「自ら死を選ぶほど結婚が嫌だったか?」  目に飛び込んできたのは恐ろしく美しい男の顔。 「しかし、残念だったな。せいぜい50~60年耐えていれば朽ちる肉体だったというのに」  男の風貌は人間そのものなのに、私の中の何かがそれを否定する。  まだ思考と肉体が繋がらないからなのか。  現実世界では見慣れない男の服装と、目の端々に入る室内がどこかおとぎ話に出てくるような現実味のなさからか。  とにかく全てが違和感だった。  男の顔が落ちてきて、私の首筋に唇が触れる。言葉にならない悲鳴は問いかけによって飲み込んだ。
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